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《プチレッスン》第11回/薄くしたいけどつやも出したい

2021年6月24日掲載



◆カサカサになる理由◆
 
上絵付の作品を焼いてみたら、
出来上がりが思いのほかカサカサした感じに
なってしまい、
ガッカリされたという経験はないでしょうか。
 
いや、描いていた時はつやがあった、
これは窯が悪いのでは?
と思われる方も中にはいらっしゃるかと思います。
 
電気容量とか、温度設定とか、
たまたま故障していた、とか、
窯や焼成の問題、ということも
あり得なくはないですが、
(もちろん焼成の仕方についても、
色々問題にすべき点はあります。
それについては掘り下げると
また長くなってしまうので、
別の機会にまとめて取り上げたいと思います)
ほとんどの場合、実は
「絵具の量が少ない」ことが原因で、
つやがない、カサカサしている、
などの状態は起きています。
つまり薄塗りということです。
 
上絵具は、大まかには、
色を出すための金属物質と、
焼いた時に定着させてつやを出すための
ガラス成分で出来ています。
 
薄い色で表現したい時は、
普段より絵具をゆるめたり、伸ばして塗ったりします。
そうすると、当然絵具の量自体は少なくなります。
絵具の量が少ないということは、イコール、
つやを出すための本体成分である
ガラス成分も少なくなっていること、になります。
 
ですので、原理的には、
〈絵具を薄くしたいけどつやも出したい〉
というのは、実は矛盾したことになるのです。
 
絵具は通常、オイルなど、
何かしらの溶剤で練っているので、
描いている時はつややかに見えるものです。
ましてや、薄い色にしたくて、
ちょっとオイルを多くしよう、などという時は、
尚のこと絵がツヤツヤピカピカに見えています。
 
でもそれはオイルでツヤツヤになっているのであって、
オイルは焼いている間に、
全部なくなってしまうのです。
描いているときの印象だけを見て、
「今日はつやを出したいから、
オイルを多めにしてみました」
という方さえいらっしゃいます。
これでは、全く逆の結果になってしまいます。
 
【ある程度の厚みで・適切な温度帯で焼く】
 
これが絵具のつやを出すために必要なことになります。
 
 
◆薄くしつつ、つやも出すには?◆
 
そうすると、
じゃあ薄くしたいけどつやも出したい
という時にはどうしたらいいのでしょうか。
 
薄く塗るとつやがなくなってしまう。
ある程度厚めにつけないといけない。
どうしましょう。
 
この場合の解決策として、
まず一つは白を混ぜる、ということがあります。
 
例えば薄い青を表現したい場合、
ただ青い絵具を薄く伸ばして塗るのではなくて、
ミキシングホワイト』などを混色して塗る、
という方法がまず一つです。




そうすると、当然色自体は薄くなり、
しかし白が混ざっている分、絵具の厚みは
つやを出すための必要量が保たれます。
 
そしてそれと同じ理屈として、
つや出しフラッキス』を混ぜる、
という方法もあります。




ミキシングホワイトを混ぜるのもいいのですが、
色がホワイトブレンド、
つまりパステル系の色になりますので、
少し狙っている薄さとは違ってしまうこともあります。
 
フラッキスの場合は、粉は白いですが、
焼くと透明になります。
同じ薄い色でも、
ホワイトブレンドの薄い色なのか、
純粋にそのものの色が薄くなったものなのか、
少し違うのです。
 
フラッキスなど、
つやを出すようなタイプの絵具だと、
鉛分が多くて有害だから食器には向かない、
という誤解もあるようですが、
元々、フラッキス含めウツワトエツケのメインカラーは
「低鉛で、食器としての使用に適した絵具」
というコンセプトで、 焼成された絵具面から、
鉛分が強い酸で溶け出さないか、などの試験を行い、
一定の基準をクリアしたものだけを扱っているので、
800℃以上の必要な温度で焼成されて、
きれいに溶けて定着している状態であれば、
食器としての使用に問題はありません。
 
逆に言うと、
温度が中途半端に低かったり、
薄塗りすぎたりしている場合の方が良くありません。
 
そういった場合、
ただカサカサした感じになるのが良くないだけでなく、
・温度が低い=定着成分が溶けきれていない
・薄塗り=定着成分が少ない
などということになるので、有害になり得たり、
焼成後に絵具が取れてきたりする原因にもなります。
 
薄くしたいけれどもつやを出したい、
というケースであるなら、
むしろ白やフラッキスを加えた薄い色を作って、
ある程度の厚みをつけて塗った方が安心と言えます。
また フラッキスについては、
焼き上がっている上から塗って
焼き付けるということも出来ます。
そうすると、透明なカバーコートを
施したような仕上がりになります。


◎花の薄塗り面にフラッキスを加えてつやを出した例


平筆を主に使う濃淡を生かした絵画的な絵付けや、
アメリカンタイプの絵付けなどは、
どうしても薄塗りを多用しがちなので、
何もしないとカサカサした感じが強くなりがちです。
今申し上げたような方法もありますし、
場合によっては器自体を、通常の白磁ではなく、
溶け込みやすいボーンチャイナなど、
釉薬のやわらかい器に変えてしまう、
ということも方法の一つでしょう。


◎釉薬のやわらかい器に描いた作品例。
 同じように描いても白磁よりもつややか。


◆つやの出やすい絵具と使う工程◆
 
他に、そもそもつやが出やすいタイプの
絵具もあります。
 
1. 最初から白が多めに配合されているような絵具
2. 黄色、または黄色が多く配合されているような絵具
 
などです。
 
1の場合は、例えばパステルっぽい色などや
中間色的なニュアンスカラーなどがそれに当たります。
例えばパステルやそれに近い色で言えば、
 
青系で
マカロンブルー
ブルーソーダ
ターコイズブルー
キャンディーブルー
など。
 
紫なら
ラベンダーミスト
 
ピンクなら
サクラ
パープルピンク
コーラルピンク
 
緑なら
スペアミント
モスグレー
 
茶系で、
カシミヤベージュ
サンドベージュ
 
などなど。
どれも、やさしく、上品な色が多いですね。
 
2についてですが、
そもそも黄色自体が濃くつきやすい色なので、
厚みをつけたつもりはなくても
自然に適度な厚みになっている、
というのが黄色、また黄色が多い絵具の特徴です。
 
レモンイエロー
ネイプルスイエロー
はもちろんのこと、
アップルグリーン
ライムグリーン
などの黄緑系の絵具もつやが出やすいです。
 
最近販売している動画付きのテキストでは、
これらの絵具や一部ではフラッキスも用いて、
自然につやの出やすい絵具の組み合わせで
描いています。
 
○『ニュアンスカラーで描くマグノリア
○『水溶性のペン描きと丸筆の面塗りを学ぶ
 花柄のショコラプレート

○『マスキングとグラデーションで描くハナミズキ
○『〜下絵から作る〜 面相筆と平筆で描くアジサイ
 
など、ご参考までに。
 
また、
これらのつやが出やすい色を単色として
そのまま仕上げる色に使うことも出来ますが、
より深みをつけたい絵柄のとき、
絵付けの手順としておすすめしたいのは、
これらを主にベース色として、第1焼成などに用い、
第2焼成以降で、
濃いめの色を使って色を濃くしていく、
という手法です。


◎全体的に薄くベタ塗りして描いたハスの花。
 パープルピンク・アップルグリーン・スペアミント
 などを使用。

いきなり濃い色で濃淡を使い分けて描くよりも、
まずはベースとして、
薄めでつやのある色を塗って焼いておいて、
後から濃い色を足していく、というやり方の方が、
仕上がりもつややかになるだけでなく、
工程としても描きやすく、濃淡も表現しやすいです。


◎濃い色を足して描いたハスの花。
 ローズマロンNo.2・マラカイトグリーン
 などの濃い色で加色。


いかがでしょうか。
絵具を薄く塗ることとつやを出すことは、
基本的に矛盾したことである、ということの理由と
その対処法についてのお話でした。
やはり作品の仕上がりは、見た目も触った感じも、
つややかに滑らかにしたいものですよね。
皆さんの作品を描くときの参考になれば幸いです。
(文・講師/江川)
 

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