《プチレッスン》第15回/マスキングをしたい時
〜リキッドとテープの使い方〜
2022年1月12日掲載
絵付けの技法として欠かせないものの一つに、
マスキングがあります。
はみ出してほしくない所をカバーしておくものとして、
また、絵そのものを形作るものとして、
シンプルな技法でありつつ、
奥行きのある作品づくりには、
なくてはならない技法です。
陶磁器の絵付け、特に上絵付けでは、
絵具が器表面に染み込まないので、
物理的にはみ出さないようにするマスキングテープや、
乾くとパリパリと剥がせるリキッド状のマスキング液、
などを主に使います。
経験の長い方にとっても大事な技術ではありますが、
これから本格的に絵付けを始めてみよう、
という方にとっては特に、
はみ出すことを気にせず絵具を塗れて、
安心して絵の形を作れるので、
絵付けに馴染んでいくキッカケにもなるような
技術です。
○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○
そんなマスキングに使用する
主な2つの道具と手法、使い方をご紹介します。
一つは、液状のマスキング剤、
『水溶性マスキングリキッド』を使った
〈リキッドマスキング〉の手法、
もう一つは、
『3Mマスキングテープ 24mm』
『クリアラインテープ 3mm』
などを使った
〈テープマスキング〉の手法です。
…………………………………………
まずリキッドマスキングの手法について。
テープマスキングでは表現しづらい、
曲線を多用するものや
細かなデザインなどの際に使用します。
また、水溶性のマスキング剤なので、
絵具を練る溶剤は基本的に
油性に限定されるのが注意点です。
(絵具に水分が含まれているとマスキング剤が溶けて
剥がせなくなってしまいます)
「水溶性マスキングリキッド」を
タイルの上などに適量取り出し、
面相筆や丸筆でカバーしたい所を塗ります。
固くなるのが早いので、
少しリキッドが伸びにくくなったら、筆を洗うこと、
またリキッドそのものに少量水を加えて
パレットナイフなどで練り直して使う必要があります。
(ただ緩めすぎても、
剥がす際切れやすくなりますので、
そもそものリキッド量が少なくなったら、
瓶から新たに出して使います)
まずはカバーしたい部分を慎重に縁取るようにします。
はみ出してしまったら乾かない内に
『オリジナルゴムピック』で修整します。
その後、剥がした後の掃除のし残しを減らすために
リキッドを塗り足して、マスキングの面積を広げます。
また、厚みをなるべく均等に整えましょう。
少し乾かす時間をおいて、
指先でマスキング表面を触って、
乾いてきたのを確認したら、
面を筆やスポンジなどで面を埋めます。
ちなみに絵具を練る溶剤は
乾きが遅く面を整えやすい『ペインティングオイル』
スポンジで面を整える際は、
『ラップテープ』を二重にして
中に手芸用の綿をふんわり詰めた
ポンポンを使用しています。
剥がす際は、ピンセットや先の尖ったものなどで
マスキングの端を持ち上げ、もう片方の手も添えて
なるべく手早く剥がします。
マスキングの厚みを整えておくことで、
この時マスキングが途中で切れるのを防いでくれます。
薄すぎる部分やごく細いマスキング部分があると
途中で切れてしまい、
きれいに面を整えた部分に
落ちてしまうことがあります。
あまりゆっくり剥がすのも
途中でマスキングが切れる原因になります。
十分注意しましょう。
…………………………………………
そしてテープマスキングについて。
絵の形に整えたい時によく使う方法としては、
器に写した下絵の上から、
それをカバーするように全体的にテープを貼り付け、
透けて見える下絵のラインに合わせて
『NTカッターD-400』などの
小回りのきくカッターで絵柄を切り抜き、
そこに筆に取った絵具で色を入れる、
という手法があります。
テープを貼って切った状態がこちらです。
テープが貼っていない所にはみ出した絵具の
掃除をしなくてもすむように、
少し広めにテープを貼ることと、
カッターで切り抜く際、多少切りやすくするために、
テープ同士があまり大きく重なりすぎず、
重なる面積を少なめにするようにしておくと
作業しやすいです。
そして、切り抜いた所に絵具を入れ、
テープを剥がして出来上がった状態です。
(※こちらは2月初旬発売予定の柳田講師制作、
動画付きテキスト『平筆とパディングで描く動物』
からの画像になります。
どうぞお楽しみに)
…………………………………………
テープのマスキングということでは、
単純に通常のマスキングテープだと
直線部分ではみ出したくない所であれば
使い方は分かりやすいですが、
実は曲線でも使えるマスキングテープというのもあり、
それが「クリアラインテープ」を使った、
円などのマスキングです。
円の正確性で言えば、リキッドをゆるめて、
ロクロなどを使用して円を描くという
方法もありますが、
手軽に曲線のマスキングが出来るという点では
大変優れているテープです。
貼る際は、
右利きの方で言えば、左手でテープを押さえながら、
右手で少しずつ引っ張りながら弧を描くように貼ると
より滑らかなカーブになります。
丸く貼ったクリアラインテープを剥がした様子です。
クリアラインテープには3mmと5mmの幅がありますが、
いずれにしても、スポンジなどで面をたたいた後では
絵具がはみ出している箇所が必ず出てきます。
これをよく確認して掃除するのが
大事な仕上げ作業です。
狭い所は綿棒で、広い所はペーパーで拭きます。
基本的には空の綿棒やペーパーで十分ですが、
油分をしっかり取りたい時は
『クリーニングアルコール』などを含ませます。
(その後また仕上げに空の綿棒やペーパーを使って
拭くといいです)
器の縁にはみ出した絵具は小さくたたんだペーパーで、
丸いお皿なら、縁に当てたペーパーはあまり動かさず、
お皿の方を回しながら拭くときれいに掃除出来ます。
拭いたつもりでも、薄く絵具が伸びていると
そのまま焼きついてしまうので、
最後によく確認しましょう。
絵付けの制作に欠かせない手法の一つ、マスキング。
初心者の方から経験の長い方まで、より多くの方に
制作に取り入れて楽しんでいただきたいと思います。
(文/講師・江川)
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