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《プチレッスン》第9回/夏に向けてガラスの絵付けレッスン

2021年5月27日掲載



今回はガラスの絵付けについてのお話です。
季節的にガラス関連のお道具が動いて来ましたので、
ガラス関連をまとめたカテゴリー
『ガラス絵付道具〈絵具・マーカー・転写紙〉』
作りました。
 
ガラスは焼成温度が600℃です
(ウツワトエツケのガラス用絵具の場合)。
通常の白磁は800℃前後ですので、
専用のガラス用の絵具が必要になります。
ガラスの器・ガラス用の絵具・焼成に
注意して頂ければ、白磁と比べて
溶剤や描き方などに大きな違いはありません。
 
どちらかというとガラスには
やはりホワイト系が映えますので、
『グラス ホワイト』
『ガラス用パールレリーフパウダー』
よく売れています。
ガラス絵付けが初めてという方は
まずはこちらからおすすめします。
 
現在ガラスの器は扱っておりませんが、
100円ショップなど、今は色々な所で
手ごろな物が購入出来ますので、
そういった器で楽しまれている方も
多いと思います。
 
器選びではよく、
〇ソーダガラスは絵付けOK
×クリスタルガラスは絵付け不可
△耐熱グラスは種類によって絵付け不可
(実験により焼き付かないものもありました)
と言われますが、
なかなか見た目では判断しづらいという事もあります。
心配な場合はまず焼成実験を
して頂くことをおすすめします。
棚板が心配な場合は、陶器のパレットタイルの
裏面(釉薬が付いていない方)を上にして、
その上にガラスを置いて焼成して頂くと良いと思います。




こちらは某お菓子屋さんのプリンが入っていた器です。
ジャムの空き瓶など、比較的厚めで安価なものは
ソーダガラスを使っているものが多いようですので、
問題なく綺麗に焼成出来ました。
種類によっては絵付けが出来ないものも
ありますので、注意が必要です。

 
陶画舎でよくガラスの焼成トラブルで
多くご質問があったのは、
●焼成後、触ったら絵具や転写紙が
 取れてしまった(上手く焼き付かない)
●器が変形してしまった

主にこの二つです。

まず焼き付かないということについてですが、
ガラスの焼成温度は600℃と低いため、
窯に置く位置や量でかなり焼成結果に差が出ます。
熱線から均等に熱が当たらないと
生焼け(焼きつかない)が良く起こります。
※ガラスの種類によって焼きつかないという
 場合もあります
 
●窯には沢山詰めずに余裕をもって器を入れること
 (器との間は5cm以上空けるのを推奨)
●棚板は組まない
●プレートは、大きい場合は三角棚などは使わずに
 基本ひと窯1枚で焼く

というのがおすすめです。
800℃焼成の白磁と比べると非効率なのですが、
生焼けを防ぐには沢山詰めない、
複数の場合は熱線からすべて均等に並べることを
意識して頂くと良いと思います。
窯に器が沢山入っていると
カップなど、真ん中に置いた物だけ
生焼け…ということもあるのです。




グラスを5点焼く場合、
このように1点中心に置くと、
中心だけ熱線から遠くなってしまいます。



この場合はこのように、どちらも熱線から
均等に当たる位置に置いた方がより失敗が少ないです。

器の変形については器の薄さや形状などもありますが、
よくあるのは温度を上げたこと、またキープ
(600℃まで上昇した後に同じ温度を一定の時間
保つこと)時間を入れることで起こりやすいです。
温度を上げたり、キープを入れると
絵具によりツヤも出て綺麗に仕上がるので
そうしたいところなのですが、
例えば薄手のプレートの場合は縁が垂れて
変形しやすくなります。
そういった意味からガラス絵具の商品ページでは
キープ時間無しで、ということを説明に入れています。
こちらも白磁と比べ、繊細ですね。
ただ、私達も焼成時キープを入れるケースもあります。
キープを入れたい場合、どの位で変形してくるかは
器の形状によっても変わってくるので、この辺りも
気になる方は実験して頂くのが良いかと思います。




こういったリムタイプのお皿は特に
キープを入れるとリムがどんどん下がり、
変形して垂れてしまいやすいです。
 
あとは温度変化、急昇温・急冷に弱いので、
蓋を開ける際は白磁よりも
より慎重にして頂いた方が良いかと思います。
ガラスはかなり細かく破損することもありますので、
ケガなどしないよう、
お取り扱いには充分ご注意下さい。

 
ガラス絵付けは現在あまりお見本が無いのですが、
江川先生がインスタグラムでいくつか作品を
載せていますので、宜しかったらご覧下さい。
●パディングのみで比較的簡単です
 こちら→ https://www.instagram.com/p/CB59kG9noMc/
●白磁とガラスの重ね使いも素敵です
 こちら→ https://www.instagram.com/p/CA-mGZoHOC2/

実はこちら、いずれも裏から描いています。
手描きの場合、プレートに限っては
断然裏からの絵付けがおすすめです。
表から見ると間にガラスが入っていますので
見た目のツヤが増します。
こちらの方がより綺麗ですし、
安全性の面からもおすすめです。
(窯に入れる際は伏せて焼きます)
 
当たり前ではあるのですが、全て反転しますので、
転写紙や、デザインによっては裏からだと
問題があるものもありますので注意が必要です。
※重ね描きしてある場合は重ねた部分が表からは見えません。
サインなどうっかりそのまま描くと
反対になってしまいますのでご注意を…。

安全性の面で付け加えますと、
白磁でも言えることですが、
ウツワトエツケで扱っている上絵具は
食品衛生上の基準を満たした絵具ですので、
正しく絵付けされて適温で焼成している状態であれば
普通に使って頂く分には問題は無いのですが、
やはり酸が強い飲食物(炭酸・酸の強いジュースや
フルーツ・マリネなど)が長い時間直接触れる
部分に絵付け(転写紙も)するのは
避けて頂いた方が良いです。
カップ系やボウル、プレートの内側部分の絵付けは避けて、
より安全にお使い頂ければと思います。

ガラス絵付けの溶剤についてのご質問も多いですが、
おすすめは『水溶性メディウム速乾性』です。
ペインティングオイルなどの油性でも良いのですが、
ガラスの立ち物は白磁よりも焼成時に流れやすいので、
どちらかというと速乾性の方が失敗が少ないです。
しっかり乾燥させてから焼成しましょう。


最後に描き方の動画を少しご紹介します。
 


紙に描いた下絵を裏側から貼っています。
ガラスには下絵が写りにくい(見えない…)のと、
スタビロ鉛筆は600℃では焼き残る場合があり、
一番のおすすめはこの方法です。
ちょっと距離感があるので、若干描きにくいです。
本当は下絵なしのフリーハンドが良いのですが
下絵が必要な方はこの方法を試して下さい。



『ディテールライナー』でストロークで描いています。
この筆はストロークも決まりやすく、
適度なコシがあり、盛りにもおすすめです。
こちらは盛り上げていますが、
盛り上げが出来る
『ガラス用パールレリーフパウダー』
『グラス ローズ』を半々位で混ぜています。
いずれにしても盛り上げすぎずに、
水溶性メディウム速乾性でマヨネーズ位に練り、
必ず水で乳液〜ヨーグルト状位に希釈して下さい。
水を加える事でしっかり乾燥し、
焼成トラブルが少なくなります。
※グラスローズなど、カラーのガラス絵具を
 単独で使う場合は、盛り上げることは
 出来ませんのでご注意下さい。

 

 
描き終わったところです。




焼成後。600℃、キープ無しで焼成しました。
ガラス用パールレリーフパウダーが入っているので、
少しメタリック感が出て綺麗ですね。
 
色々と注意事項があり、長々となってしまいましたが
今の季節感にはぴったりですので、
この機会に挑戦して頂ければと思います。
(文・講師/松山)

 
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